官能小説「どうしようもない」(女性向け)

梅雨はなぜこんなにも蒸し暑いのか。六月に入ってからなんどそう思っただろうか。そして、彼女はこうも考える。梅雨の暑さは、なぜこうも身体の熱を高ぶらせるのか。
彼女は一人暮らしの、狭いワンルームで扇風機だけに頼って風呂上がりの熱を冷ましていた。しかし身体にへばりついた汗は引かない。むしろじわりじわりと彼女の身体を溶かしているようであった。
きっとこの汗は、セックスの時と同じ汗なのだろう。彼女は太股を滴り落ちる感覚に身震いをしながら何かと戦っていた。何かとは? それは間違いなく本能的なものであり、決して彼女がその衝動に身を任せたからといって非難されるものではない。彼女は怖かったのだ。なぜなら一度身を任せると止まらなくなることを知っていたからだ。
(少しだけ)
彼女のオナニーはこの一言から始まる。短パンに手を入れ、指の腹で擦っていく。彼女の身体はすぐに反応した。息が荒くなる。扇風機の風で前髪が乱れるが、そんなことに構っていられない。
人差し指と中指で、マッサージするように優しく揉む。固くなってきたクリも優しく、あやすように揉んでいく。
彼女は昨日セックスしたばかりの彼氏のことを思い出した。彼女は下心一杯であったのだが、彼もそうだったのだろう。会って形だけのデートをして、気がつくとベッドに流れ込んでいた。
(ああ、見て。こんなになっちゃった)
彼女は短パンを脱ぎ、パンツを横にずらし、局部を広げて見せた。濡れているのが分かって、余計に興奮した。
昨日はお互い余裕がなかった。吸いつくようなキスをして、しわになるのも構わず服を無理やり脱がして。互いに興奮しきっていたのだ。愛撫もそこそこに挿入した。待っていた感覚に、彼女は喉を鳴らして喜んだ。
(ここ、見て。触って。舐めて)
彼女は愛撫されるのが好きだった。彼の太い、ごつごつとした指で掻き回されるのが好きだった。オナニーとは違う、手加減のない気持ちよさである。彼女はぱっくりと開いた自分のそこに指を入れて、なるべく乱暴に掻き回した。目をつぶり、彼の指を思い出す。
(もっと、もっとして。奥まで入れて)
彼女はみっともなく腰を上げて、いやらしい音を立てて中を掻き回す。
(ああん、気持ちいい、気持ちいいよ)
軽い、遊びのような絶頂を迎える。しかし足りなかった。彼女はのろのろと立ち上がり、ある引き出しを開く。
そこには通販で買ったバイブがあった。試しに、と思って買ったのだが案外気持ちよくて、こうしてたまにお世話になっている。
落ち着いて箱から取り出されたのは黒いバイブだ。太さは彼氏のものより少し小さめ。彼女はベッドへと場所を移動した。部屋は真っ暗で、布団を端に追い遣る。
(ここ。ここが好きなんでしょ?)
彼女は愛撫するのも、されるもの好きだった。バイブを丁寧に舐め上げる。わざと音を立てて、びちゃびちゃにするのだ。左手でバイブを支えて、右手で性器をほぐす。ただただ気持ち良かった。
彼女はだんだん服を脱いでいった。裸の肌に布団が擦れるのが気持ちがいい。
(入れるね。いいよね)
バイブで局部を擦る。ぐちゃぐちゃと音を立て、ぬるぬると擦れるのが気持ち良かった。腰が小刻みに揺れる。
彼女は一気にそれを中に押し込んだ。身体が喜んでいるのが分かる。彼女ははしたない声を上げた。
身体は余韻を楽しみたいのだが、右手が勝手に動くのだ。バイブを乱暴に動かし始める。
(ああん! そんなに、だめ! ゆっくりがいいよお!)
彼女は今、彼に腰をつかまれて乱暴にゆすられているのだ。彼女は多少無理やりされる方が興奮した。右手は角度を変えながら、左手はクリをいじりながら、彼女は快楽をむさぼった。音が激しくなり、呼吸が荒くなる。汗が身体を伝うのさえ快楽に変わった。
(そんな、いいとこばっかり、だめえ!)
右手のバイブは容赦なくGスポットを攻める。クリもつままれ、彼女の身体は高ぶった。
「ああん! も、もうっ、イクッ……!」
彼女の身体が跳ねる。快感が身体を満たす。彼女はゆっくりと呼吸を整えた。
オナニーが終るときほど虚しいものはないだろう。彼女はゆっくりと起き上がり、バイブを引き抜いてティッシュでふく。局部も同じようにきれいにして、身体もタオルできれいにふき取りそこら辺に落ちていた服を着る。
彼女は時計を見た。まだ夜の九時である。寝るには早いし、身体の熱が残ってはいるものの、もう一度快楽にふける気分ではない。
彼女はベッドに横になると、携帯を取り出した。慣れた手つきである番号へと電話をかける。
「あ、もしもし」
電話の相手はすぐに出た。彼である。
『どうした?』
「あのね、今いい?」
『いいけど、どうしたの?』
彼女は自分の吐く息が熱くなるのを感じた。
「あたしね、今オナニーしてたの」
彼が息を飲むのが分かった。同時に呼吸が荒くなっている。
「気持ちよかったんだけど、やっぱり足りない。でも、今からは会えないもんね」
彼女は舌なめずりした。
「だから、二人でオナニーしよう。電話越しにさ。ねえ、いいでしょ……」
彼が生唾を飲み込んだ。彼女はゆっくりと下着を脱ぎ始めた。

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