官能小説「寝室のほの暗い灯りに揺れ動く母の影」

「寝室のほの暗い灯りに揺れ動く母の影」

これまでの長いあいだ、僕は母に面倒をみてもらい、小さいころには体を洗ってもらい、食事を口に運んでもらい、また排便の世話までしてもらったのです。
いまその母が全裸となって、僕と体を重ね合っていました。
僕は自分で自分のしていることが、なにかファンタシーの中の出来事のように思え、まったくといっていいほど現実感がありませんでした。
母をこの手で抱く。僕と母は今、その一線をこえようとしていました。
父に捨てられ、それでも気丈にふるまい、僕や姉の前ではこれまでどおりの優しくて思いやりのある母でした。
僕があの雨のふる一夜に、母の寝室からこぼれでたあの声さえきいていなければ、こういうことにはなっていなかったことでしょう。いや、また別の形で二人は、道ならぬ恋におちていたような気がします。母と僕は、そんな運命にあったのです。
母はあのとき、その全裸を隠すこともしないで、僕の目をひたとみすえ、あとはあなた次第とつぶやきかけました。
僕には拒否する選択肢もあったのです。拒否すべきだったのでしょう。しかし、それは僕にはできませんでした。僕には同じ大学に通う彼女がいました。これまで何度も肉体関係を繰り返していました。彼女の体をひろげ、体毛におおわれた秘所をみたとききまって、母のそれを思い描く僕でした。僕は彼女の肉体をつかって、そのときから母と交わっていたのです。

いまその母の体を目の当たりにした僕に、どうして母を拒むことなどできるでしょうか。
母はひとり、自分で慰めていたことがかわると僕は、これまで以上に母のことがかわいそうでならなくなりました。これを恋といってはいけないのでしょうか。
僕は母の肩にてをあてながら、廊下の突当りにある寝室に向いました。
スタンドの、赤茶けた明かりにみちた部屋には、広いベッドが横たわっていました。母はこの上で、自分を慰めていた………。今度は僕がなぐさめてあげる。そう思うことによって、僕は肉親を抱くというタブーから目をつぶることにしました。
僕は、パジャマを脱ぎにかかりました。シャツも脱ぎ、最後のトランクスもぬいだとき、はじめて背筋にゾクゾクした戦慄がはしりぬけました。彼女をはじめて抱いた時とは比較にならない衝撃に僕は、しばらく身震いがとまりませんでした。罪の意識は、それを破る者に言いしれない快感をもたらすのかもしれません。
僕が全裸になるのを、母は横になってながめていました。手が、僕の腕にさわりました。その手が膝の上にまでのびてきて、しばらく皮膚の感触を味わうかのようにおなじところをなでさすっていました。
僕は、母の上に身体を重ね合わせました。ここにきてもまだ、心の奥底ては、いけないと叫ぶ自分がいました。僕はかまわず母の唇に自分の唇を重ね合わせ、おもいきって舌を母親の舌までのばしました。母もそれにこたえるように舌をからませてきました。
豊かな胸が僕の体におしつけられて膨らむのが感じられ、下のほうでは、Vゾーンの窪みを覆うふさふさした体毛を感じていました。僕はこのまま母の中に入っていきたい衝動に強くかられましたが、それでは母が傷つくとおもい、股の間にのばした指で、やわらかな場所を愛撫し始めまると母が、ゾクリと肩をふるわしました。
それからも僕は、母の肉体をくまなく愛撫しつづけ、指で口でまた舌と、あらゆる器官を駆使して母の体をほぐしていきました。その間母もまた、僕の肉体をおなじように手と口と舌で愛撫をつづけ、お互いの体はすっかりできあがり、あとはまじわるだけの状態になっていました。
「だめだ、できない」
僕はじぶんの、ふどふとと屹立した肉をみながら、激しく首をふりました。
「どうしたの」
母が訝し気に僕をながめました。足を大きくひらき、陰毛の絡みつく秘所を僕のまえに完全にさらけだして、僕がそこにつきいってくるのをまちかまえていた母でした。
母は当惑しながらも、さらに股をひろけ、自分の手で秘所を両側から大きくひらいてみせました。スタンドの明かりにその襞と襞にはさまれた切れ目が、僕の目にあゆしく口をひらくのがわかりました。
「できない、母さん。僕には母さんの体にはいることはできない!」
こみ上げる欲情はいまにも身を燃やさんばかりに激しいものでしたが、それよりもはるかに強い力が僕をがっしりとらえて離しませんでした。それが何かを言葉で説明することはできませんが、あえてたとえるなら僕の中にながれる血だったのかもしれません。
「むりしなくていいのよ」
母親は、僕の中でおこっているはげしい葛藤を見抜いたかのように、言いました。そしてしずかに足をとじようとするのを、僕はおもわず、
「待って、母さん」
いいながら、僕は自分の硬直した肉をにぎると、けん命にさすりはじめました。
「なにを………」
母親にはすぐに僕の行動が理解できたようです。それはさっき、ひとりでいるとき自分自身がやっていたことでした。
母はふと腿を拡げに拡げて、僕のからだにすりつけるようにしました。陰毛が、恥骨が、そして襞にはさまれた裂け目がふれるたびに僕の肌はなまぬるい体液でぬれるのがわかりました。
これ以上ないというぐらい太く硬直した肉に、僕が渾身の力をこめてさすりあげた瞬間、僕から
噴き出した白濁した粘液が、彼女の股間に飛び散り、数滴が切れ目の中にも飛び込んでいきました。
僕が大きな声をあげたとき、母親もまた声をあげ、背をそりかえらせてイクのがわかりました。いまはじめて母の指が、自分自身の秘所に当てられていたのがわかったのは、その時のことでした。

官能小説「寝室のドアが開いて」(母と息子)

「寝室のドアが開いて」

父が女を作って家をでてからは、家には母と姉と僕の3人が暮らすようになりました。
母は、しばらくはショックのようでしたが、それもひと月余りの間だけで、いまはもとの落ち着いた、僕たちにはこのうえなく優しい母親にもどっていました。
若い頃はミス・なんとかに選ばれるほどの容姿は、いまでは小じわが少しは増えたとはいえまだまだ瑞々しさを保っていました。体つきも、胸は大きく、腰も大きく張り出していて、細いだけが取り柄の姉なんかよりずっとセクシーに映りました。けれど父とちがい母は、けっして他の男性に心をよせるようなこともなく、部屋で一人執筆の仕事に没頭していました。
大学生の僕にも、女のことは少しはわかるつもりでいます。母は性愛の処理はどうするのか、息子がそんなこと心配してもしようがないのですが、父にボロ布のように見捨てられた母に同情を禁じ得ない僕には、やはり気になるところでした。時はちょうど夏休みで、家に入る機会も多く、会社員の姉と違って僕は、母と二人でいる時間が有り余るほどあったのでした。
「母さん、ちょっといい?」
言いながら僕は、書棚を背にして書き物をする母親の部屋に入っていきました。
「かまわないわよ」
母が、姉よりも僕をよくかわいがってくれるのをいいことに、僕はたびたびこの部屋に入り込むのでした。
冷房の嫌いな母は、窓を開けはなしにして庭から入り込む風で涼をとっていましたが、それでも今日のような猛暑には、とてもそんなものでしのげるものではありませんでした。
見ると、母は上はシャツ姿で、下は驚いたことに水着、それもビキニをはいていて、裸のふと腿が机の下で組み合わされています。
「この恰好がいちばん仕事がしやすいの」
母は僕をみて笑った拍子に、胸がそりかえり、シャツの下が大きくもりあがりました。そんな母親を見て僕は、またしても性の処理のことを思いました。これもまた息子が言うようなことではありませんが、母はほとんど毎日のように父を求めていたようです。夜中などに、夫婦の寝室のある一階から階段越しに、母の声が筒抜けにきこえてきたことは、一度や二度ではありません。姉は存外平気でしたが、僕なんかはあれを聞くと試験勉強も手につかないありさまでした。その喘ぎとも、鳴き声ともつかないうわずるような声音が僕に、今その声を出している母の姿をいやでも想像させるのでした。声には抑揚がつき、次第にそれが高まってきて、最高潮に達してやがて途絶えたとき、僕は思い切り耳をとざしていました。
あるいは、そんな母だったからこそ、父は引いて行ったのかもしれません。女のあまりに激しい情愛を前にして、男は逆に冷えていくものだぐらいは僕にもわずかな経験からわかっていました。

今、書斎の中で近眼用眼鏡をかけてパソコンにむかう母は、理知的で、非常に落ち着いてみえ、とてもそんな女性には見えないのですが、女というものがいかに豹変するかもまた、わずかな女性遍歴で僕にもわかっていました。
「ねえ」
ふいに母が僕をみました。
「なんだい」
「あなた彼女いるの?」
「急になにをいいだすんだ。そんなのいるわけないじゃないか」
とっさに僕は嘘をついていました。肉体をゆるしあった同じ大学に通う彼女がいたのです。
「そうなの。だけど、もうあなたも立派な男性なんだから、精力をもてあますんじゃない」
おどろきました。僕と同じことを母も思っていたのです。
「母さんだって」
つい言ってから僕は、あわてて手で口をふさぎました。
母はだまって、切れ長の奥二重の目で、僕をじっとみつめました。息子の僕でさえ、おもわずぞくっとするような、妖艶さを帯びた凄いまなざしでした。
それっきり、どちらも黙り込んでしまったので、僕は頃合いをみて部屋から出て行きました。
その夜は雨がふり、おそくまで書斎にこもっていた母がいつ寝室に入ったかはわかりませんでした。
僕は階段をおりてトイレで用をすませから、しばらく一階にいました。昼間の母とのやりとりをおもいだしているうちに目がさえてきて、眠れそうもありませんでした。
洗面台の横にあるソファに座り、背後の窓をうつ雨音になにげなく耳をかたむけていたとき、ふいに廊下から女の、あの時にたてる声が聞こえました。最初は、猫かなにかと思った僕ですが、それからも二度ばかりつづけて聞こえたそれは、まぎれもなく母の口から出たものにまちがいなさそうです。
一瞬、母が男を連れ込んでいるのかと思った僕ですが、すぐに首をふってその考えを打ち消しました。母にかぎってそんなことをするとは考えられないし、仮にそうだとしても、まちがっても僕たちのいる家を使うことはないはずでした。
僕が当惑しているとき、母の部屋のドアがあき、身に何もまとってない母が姿わあらわしました。
とっさに後ろのカーテンをひっぱったものの、すでに母にまともにみられたあとでは、時すでに遅しでした。
母はだまってこちらにちかづいてきました。僕はこのときになって母が、シャワーを浴びにやってきたことを察していました。一人で慰めて濡れた股間を洗い落としに………。
「母さん」
僕の声はふるえていました。
母は一言も発することなく、僕の前まできて、耳もとで囁きました。
「これからどうするかは、あなた次第よ」
僕は、雨の中に拡散する庭の外灯の光に、幻影のように浮かびあがる母の体をまのあたりにして、正直に抱いてみたくなりました。