無料官能小説「別れの最後は」

無料官能小説「別れの最後は」(激しいエロ小説)

トイレの鏡の前で今日二度目の化粧直しをする。

このファミレスは食事時は中高生や家族連れでひどく混雑するが、レストルームは広く作ってあるのだ。
照明を跳ね返す鏡に映る、完璧に化粧を直し終えた自分の顔を加奈子はしばし睨むように見つめた。
自他ともに認める童顔は化粧の力を借りてなんとか彼女を年齢相応に見せている。だが実際は二十代の折り返しを過ぎ、アラサーと呼ばれる年齢まであと二年弱だ。染めていない癖のない黒髪は肩の上に艶やかに流れている。

加奈子は今日の服装を細心の注意を払って決めた。ドレスシャツは形こそ優雅だがフリルの最低限しかついていないもの、カーディガンは大人っぽいシックなデザイン、スカート丈は膝丈の野暮ったくない長さのタイトスカートだ。アクセサリーだっていつもの彼女よりもずっと地味なピアスとネックレスだけにした。指輪は迷った末に止めた。見栄を張ったところで空しいだけだ。
「・・・勘違いさせちゃ駄目だわ。今日はデートじゃないんだし。それにアイツとはとっくの昔に終わってるんだから」
言い聞かせる鏡の中の加奈子の頬は、しかし見間違いようもなく紅潮していた。

元恋人のシンイチからの実に三年ぶりの着信に彼女の心臓は否応なく跳ねた。
聞こえてきた声はやや掠れているように思えたが、飲酒をしていたのかもしれない。
他愛もない話に興じながら鼓動の高鳴りが忌々しくもある。
「・・・また会いたいんだ」
それにそっけなく応じた自分の強がりが見透かされていないことを加奈子は祈った。

シンイチとは社会人になってから初めて付き合った恋人だった。彼は二歳年上だったが大学を中退し、売れないカメラマンをしながらふらふらと生きていた。
やさぐれているように見える外見とは裏腹に、一度懐に入ってみると思いがけないほど無防備な笑い方をする男だった。スタジオに勤めれば安定した収入を得られるが撮りたくないものを撮影するために自分のカメラはないと訥々と熱っぽい口調で語った。
それを聞きながら加奈子は自分がこの男を支え、大成させるのだと使命感に駆られていた。

終わりは呆気なかった。シンイチが浮気をしたのだ。相手は何のことはない、彼が糊口を凌ぐために時々仕事を回してもらっていたスタジオで仕事をした女性スタッフだった。
彼は頭を下げ、別れてほしいと加奈子に懇願してきた。
加奈子は捨てられたのだ。しばらくは何も手につかないほど塞ぎ込み、食欲も落ちた。
彼からプレゼントされた写真もすべて捨て、やっと傷口も完全に塞がったと思えたときのシンイチからの連絡だった。

ファミレスで落ち合ったシンイチは変わっていなかった。
寝癖のような柔らかい髪、髭の生えない顔、長い指に意外なほど美しい形をしている爪。
向かい合って話をしているうちに加奈子は自分の乳首が固く立ち上がるのが分かった。下半身の奥から温い水が僅かに下りてきて下着を湿らせる。
一通り近況を報告し、コーヒーを飲み終えたあとシンイチは加奈子の目を見ながら笑った。
「・・・今日は遅くなっても平気か?」
彼の手が伸びてきた時、加奈子は拒まず自分の手に重ねられるそれを受け入れた。

ラブホテルの部屋に入った途端、シンイチは情欲を露わにした。
強い力で抱き寄せると加奈子の唇を荒々しく奪ったのだ。
「・・・はっ、んんっ・・・あんっ!・・・」
唇を離さず加奈子の衣服をシンイチの手が剥ぎ取っていく。ブラウスの釦を外す最中にベッドに二人して倒れこんだ。
「加奈子、加奈子・・・ああ、会いたかった。お前に・・・」
「ひゃっ、あ、冷たっ・・・」
シンイチは何かを焦っているようだった。加奈子のスカートの中に手を入れると抗う隙も与えず下着を剥がしとるように脱がせる。その手の意外なほどの冷たさに加奈子が肌をあわ立たせるのに構わず、既に花蜜をこぼしている合わせ目に指を差し込み摩擦を始める。陰核の皮を剥き、親指で押し潰すように刺激されるともう堪らない。
「やっ、ああんっ・・・だ、めぇ・・っ」
拒む声は力なく、既に加奈子は完全に捕食されるのを待つメスだった。
上にずらされたブラジャーから露出した乳首を吸われながら、シンイチの指は熱い襞の中を動き回り容赦なく加奈子を追い詰める。
「あ、も、もうっイッちゃ・・・!」
高まる寸前で加奈子の中から指が引き抜かれる。一瞬の喪失感のあと、あてがわれる熱に加奈子はほとんど恐怖した。
「はあああんっ・・・!」
「加奈子、加奈子、最高、だ・・・」
ぐぽっ、ぐぽっと痛いほど張り詰めたシンイチの肉棒が律動を開始する。
容赦ないピストンにがくがくと揺さぶられながら加奈子は忘れかけていた女の快楽に咽び泣いた。
自分が潮を吹きながら喘いでいることもよく分からず二人は獣のように交わった。

翌日、加奈子は新聞でとあるニュースを目に止め凍りついた。
そこには海外の奥地で取材をしていたカメラマンの日本人男性が死亡した記事が短く出ていたのだ。
その顔写真と名前は、知りすぎるほど知っているものだった。

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