女性向け官能小説「お嬢様の家政夫」

 怜依奈は、今年の春から一人暮らしを始めることになった都内有数の高級マンションに帰宅したが。
「おかえりなさいませ。お嬢様」
 指紋認証のドアのロックを解除すると、中には怜依奈と同じ年頃なら二十三歳くらいの男性が三つ指をついて出迎えていた。
「あなた……誰? ていうか家政婦の近藤さんは?」
「近藤さんは、今日付で怜依奈さんの家政婦をお辞めになりました。で、代わりに派遣されたのが俺です」
 御堂と名乗る家政夫は、怜依奈からバッグを受け取ると「夕食の準備が出来ていますから」と勝手知ったる我が家同然に部屋の中を歩いている。
 これは、一体どういうことなの……?
 怜依奈は、御堂が用意したというハヤシライスを口にしながら、混乱していた。テーブルの向かいの椅子に座っている御堂は、怜依奈がハヤシライスを食べる様子をにこにこしながら観察している。
 今朝までは、自分の母親より年上と中年家政婦がいて、自分の世話をしてくれていた。なのにこれからは、自分と同い年くらいの、しかも異性に面倒を見てもらうのかと思うと……考えてはいけないことなのに胸騒ぎがする。
(そういえば、さっきから私の顔ばかり見て、何なのかしら? ハヤシライスに毒でも入れたのかしら?)
 そうそう簡単に他人は信じることは難しい。
 冷泉家は、名門中の名門の家柄で現在、怜依奈の父親は国内有数の家政婦の派遣会社を経営している。なので、愛娘の都心での一人暮らしにも、『怜依奈! パパは心配だ! お前はろくに料理も洗濯もしたことないから。家政婦をつけるなら一人暮らしを認めてやる』と条件付きで、一人暮らしを始めたのだ。
(だけど、家政婦が……いや、家政夫でもパパは、私が一人でいるよりいいわけ?)
 父親の心配の基準が分からなかった。
 広いキッチンで洗い物をしている御堂は振り返り、
「お風呂入れときましたから、どうぞ」
「えっ、ええ。そうするわ」
 怜依奈はスマートフォンをいじっていた手をとめて、顔を上げた。
 よく見ると、御堂はかなりの男前だ。淡い茶色の髪の毛が柔らかい印象をもたらしているが、柔和な表情を浮かべれば甘いマスクに変身する。
 
 怜依奈は広いバスタブに足を伸ばした。お嬢様育ちで何苦労なく育ったから、すぐに相手を信用してしまうくせがあるのは自分でも承知している。けれど……
「御堂さんって、ハヤシライスお上手なのね……」
 ぽつりと呟いた台詞がバスルームの中で響いて、扉の向こうに聞こえていないかと怜依奈は心配した。けれど、無音のままで(聞こえていなかったのね。よかった……)
 その時、バスルームの扉が開いた。
「怜依奈さん、お背中流しましょうか」
「ひぇっ!」
 嘘だ。怜依奈は生まれたてのままの姿の前を両腕で隠そうとする。しかし、豊かなバストは怜依奈の華奢な腕では収まりきらない。
「っいい! そ、そんなこと、こ、近藤さんにやってもらってないから!」
「またまたご謙遜を? お嬢様の身体を綺麗にすることは俺の仕事ですから」
 そう言って白いシャツの腕を捲り、御堂は怜依奈のいるバスルームに足を踏み入れる。
「っひゃあ!」
 怜依奈の腕を引っ張り上げ、バスタブから出させた。
「そんなに長く入っていたら、逆上せますよ?」
「し、心配いらないわ。お湯は美容のためにぬるま湯だからっ」
「そうなんですか。じゃあ、すぐに身体が冷えてしまいますね。俺が暖めます」
 御堂は、いつも怜依奈が使っているボディーソープとボディースポンジを手に取ると、いっぱい泡立ててから怜依奈の背中に滑らせた。
 背中に男の人の気配を感じて、どうにも怜依奈は落ち着かない。
「い、いいっ! わ、私がやるから!」
「そんな、俺は家政夫ですよ。やらしいことなんて考えていません」
 そう言ってたのも束の間、御堂の指を乗せたスポンジが後ろから前へと回り込んできて、怜依奈のふくよかなバストを刺激する。
「ん……っ!」
 怜依奈が身体をぶるりと震わせると、後ろから意地悪く微笑んでいる御堂の姿が目の前の鏡に映った。
「くすぐったいのですか? それでも少し我慢してくださいね?」
 スポンジが優しく怜依奈の胸の尖りを掠めていく。右の乳房には薄桃色のスポンジと新雪色の泡が怜依奈のバストを持ち上げて、ゼリーのように揺らしている。
「み、御堂さ……んっ! こんなのおかしい……」
「あ、利き手が右なので右ばかりですみません。今、反対側も……」
 そう言って御堂はスポンジを持ち替えることはなく、大きく怜依奈の左胸まで回すと右同様、左も丁寧に洗い始める。
「っん、ん……っはぁあ!」
 前に回された御堂の腕は力強い。指先は左胸を刺激しているものの、腕は右の乳首を何度も掠めている。
「気持ちいいですか……?」
 訊かれて、怜依奈は動揺する。同意することなんて、と。けれど、目の前の鏡には今まで見たことのないような自分の悦の表情が映っている。
 だから、自分からお願いをしてしまったのだ。
「御堂さん……、ここ……もお願い……」
 顔を染め上げる怜依奈は、自身の両脚を開いて鏡越しに御堂に訴える。
「こことは……、どこですか。お嬢様」
「っや……ぁ、意地悪言わないで……っ」
 吐息混じりの懇願に、御堂はくすりと笑う。そして、怜依奈に言われたとおり足の間の隠された秘部に手を伸ばす。
「デリケートな部分ですから、手で洗ってあげます」
 そう言うと、泡をたっぷりすくった御堂の指先が伸びて、奥に入っていく。
「そ、そんな奥まで……っ、あっあ」
「綺麗にして差し上げます。俺を信じて」
 そして、熱いシャワーを怜依奈の秘部にかけると、御堂は自身のズボンのベルトを外して、
「これからお嬢様の中に潤いを差し上げますから……宜しいですか……」
 怜依奈が小さく頷くと、御堂は濡れた瞳で怜依奈をバスルームの壁にもたれかけさせると、
「っあ、あぁ、ん……っあ」
 暖かい温度のままで、怜依奈の中へと挿入した。

 バスルームから出てきた二人は、怜依奈のベッドの上で話をしていた。
「それにしても……、あなたが家政夫だなんて。私、驚いて、どうしようと思ったけど」
「怜依奈さん、一つ訂正がありますよ。俺は怜依奈さんの家政夫であるとともに、今日からはあなたの恋人ですから」
 御堂は、怜依奈の唇にキスを落とした。
「そうね。これから、ずっと私を支えてもらおうかしら」