官能小説「手の届かない人妻」


私は一度も彼女と目を合わせたことがなかった。それどころか至近距離で接したことも一度もなかった。
彼女の顔の造形だとか、とてもではないがその香りや体温なども知る由もない。
目で追っているだけの女がいるなら、それは別段おかしいことではない。
しかしその女性は妻だった。

私と妻はまだ新婚だった。結婚すると知らされて、その時に一度顔を見ただけだ。
まだ20にもなっていないような彼女は、壮年の自分には勿体無い女性だと思った。
私は彼女を受け入れようとしたが、その手は振り払われた。
無慈悲なる政略結婚だったからだ。
聞く所によると、彼女には親しくしている男子がいるという。
夫婦となっても寝室も別ということは、やはり自分と一緒には寝ないという確固たる決心の表れなのだろう。
私もその男子に嫉妬するほど、もう若くはなかった。
彼女が彼を愛するというならそれもいいだろうし、初夜もくれてもいいだろうと思った。
今思うと私も私で冷めていたのかもしれない。

ある日、彼女が急ぎ足で自分の部屋に向かっているのを見かけた。
呼び止めて何をそんなに急いでいるのだと聞くと、顔を赤らめきっとこちらを睨んで走り去ってしまった。
丁寧に結んであったリボンは形が崩れ、長い艶髪の毛先が所々絡まっていた。
ここで私は、ふと彼女の想い人のことを思い出した。

それからも彼女がそそくさと自室に戻るのを目撃することがあった。
酷い時は泣いているようにも見えた。
まあ多感な年頃なのだろうと、私は干渉しなかった。
彼女も私の存在など、微塵も感じていないに違いなかった。
そんなある日、どうしたのか私の部屋の近くで彼女の姿を見かけた。
肌がうっすら透けるような薄手の寝間着を着ている。
相変わらず目は赤くなっていた。この頃見る彼女の顔はいつもこうだった。
「どうかしたのか」
と声をかける。知らない、関係ないでしょ、とそっぽを向く彼女。
思えば私は彼女とあまり会話をしたことがなかった。
彼女がどんな人物かについては、人から少し聞くくらいでしか知らない。
「少し話をしないか」
なぜ自分でもこう言ったのかわからなかった。
もしかすると彼女の泣く姿に憐憫を感じたのかもしれないし、その寝間着から透ける肌が魅力的だったからかもしれなかった。
「あなたに話すことなんて……」
と弱々しい声で彼女。
「私が話したいことがあるんだ」
と言うと、ため息を付きながらついてきてくれた。
視界の隅で彼女は拭き損ねた目尻を指で拭った。

彼女は初めての部屋に、居心地悪そうにそわそわとしていた。
親しくもない異性と二人きりなのだから、それも無理なかった。
私はベッドに腰をかけて言った。
「綺麗な寝間着だ。よく似合っている」
もっと寄ってご覧と言うように軽く手で合図すると、しぶしぶ歩みをこちらに進める。
肌の滑らかさが見ているだけでわかるほど、近くに彼女を感じた。
触れようと思えばすぐに触れられる距離。
「何よ……」
また顔を背けたが、どうやらあまり満更でもないようだ。
手を後ろで組み、身体を少し左右に揺すっている。
「あまりにも綺麗だったからつい……もっと良く見せてくれるか」
彼女は薄闇でもわかるほど顔を染め、仕方ないわねと言った。
今度こそ傍に身体があった。
恐る恐る寝間着の腰に手を回すと、抵抗もなく引き寄せられた。
こんなののどこがいいの、と彼女は素直じゃない。
一通り感触を楽しんだ後、もう夜は遅いし休まないかと言った。
躊躇った後に頷く。長い髪が月の光で艶を宿した。
こうして彼女と同じベッドに入るのは初めてだった。
自分以外の体温、掛け布団の下には蠢く別の身体があった。
私はゆっくり彼女に近づき、まだ乾かぬ涙の後を優しく拭った。
「何があったんだ……こんなに泣いて」
彼女は首を振るだけで答えなかった。
「誰かに辛いことでも言われたのか」
彼女の反応は相変わらずだった。
私は背中を向けた彼女を後ろから抱き締めた。
拗ねた彼女がどことなく愛おしく感じられた。庇護欲を掻き立てると言っても良かった。
吃驚した彼女が、こちらを振り向く。
「可哀想に」
それしか言葉が出なかった。正確には、その後の言葉を強引に飲み込んだのだ。
私は彼女に覆いかぶさるようにすると、開いた胸元に軽く唇を落とした。
「きゃ……何するの……」
彼女は嫌がるよりも突然のことに衝撃を受けているようだった。
顔を見上げると、私を否定するような眼差しではなかった。
「こんなに繊細で綺麗な人だったとは」
剥き出しになった腕を撫で、髪をすいた。
抵抗しないとわかると、白い脚も撫で回す。上質な絹のような滑らかな手触りだった。
寝間着の上からも身体を愛撫する。
感度がいいのかすぐに突起は熱を持ってしまい、脚を擦りあわせ始めた。
「ここも……そろそろかな」
薄布の紐に手をかけると、更に顔が赤くなる。
そこは……と手を伸ばされたが、力は入っていないらしい。ゆっくりと下ろすと、無毛のなだらかな丘の後に朱色の割れ目が現れた。
「やだ……こんな……」
彼女は手で顔を覆ったが、少し期待しているようにも見えてしまった。
割れ目を指で何往復もなぞった後、ぐに……と指を沈める。
くちゅりと音を立てて、割れ目は指を挟み込んだ。少しばかり潤っているようだった。
更に指を沈めて、上の方の突起を探り当てる。こりこりとしたそれはまだ少し皮を被っていた。
「やっ……そこ……」
陰核が弱いのか、愛液をつけて触れるとびくびくと身体を震わせた。
触れるかか触れないかというところで、円を描くように愛撫する。
そうしているうちにどんどん愛液が溢れるようになった。
「優しくされると気持ちいいだろう」
言うと、彼女はこくりと頷いた。快感で思考力も低下しているのかもしれない。
掛け布団を少しめくると、私は彼女の割れ目を間近で見られる所に移動した。
そして陰核包皮を剥くと、舌を這わせた。彼女の弱い下側と側面を中心に、何度も何度もなぞり上げた。
舌の力を抜いて陰核に押し付けるようにして上下させると、彼女が一際大きな嬌声を上げた。
ダメ、ダメ……とシーツを掴みながらよがる彼女の姿は色っぽかった。
陰核の裏筋の少し下にある尿道口も、軽く舌でくすぐる。
入れることはできないから、押し付けるように何度も穴の周りを必要に舐め回した。
指で陰核をいじりながら舌で尿道口を味わう。
女の子の微かに酸っぱい味が淫猥だった。
陰核と尿道口の愛撫を続けて数十分が経った頃、彼女が急に腰をくねらせ始めた。
「どうしたのかな」
と聞くと、蚊の鳴くような声で漏れそう……と言った。
何が漏れそうなのかと尋ねると、さすがに黙ってしまった。
お仕置き代わりに、私は陰核をより入念に愛撫した。もうそこは真っ赤に膨れ上がっている。
裏筋に高速で舌を這わせたその時、
「あっ……あ……おしっこが……おしっこがぁ……!」
と悲鳴に近い声が上がった。
それと同時に、プシャアァァァ……という噴出音を立てて尿が放物線を描いた。
だいぶ溜めていたのか、水流の勢いはなかなか衰えない。
「おしっこやだぁ……あぁ……あ」
飛沫を上げて放物線を描いた尿は、パシャパシャと床やシーツを濡らしていく。
放尿が終わりに近づきショロショロと力なく流れる頃に彼女の顔を見ると、目も虚ろに快楽にすっかり染まっていた。
部屋にはむせ返る少女の尿の香りが立ち込めていた。

彼女は私の手の届かない人妻だった。
この晩の出来事は、私の願望と彼女の迷いが見せた一時の夢なのかもしれない。


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